通所リハビリテーション(デイケア)

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豊かさのありか

2016年1月1日(金)

介護タクシーに乗り、車椅子で一人、北山の京都コンサートホールに向かう女性がいる――吉田文子様。

音楽や文学が好きで、先日はテノール歌手の秋川雅史のコンサートに出向いた。また、月に一度、カルチャースクールの文学講座「『栄華物語』と平安朝の世界」を受講している。
歴史物語『栄華物語』は、「やすらはで 寝なましものを小夜更けて 傾くまでの月を見しかな」の百人一首でお馴染みの女流作家・赤染衛門の手によるものと言われている。

「わたしたちが学生のころは、戦争中で何も教えてもらえなかったでしょう。もったいなかったと思うの。だから今、行けるのなら行こうと思って。わたし、わがままなのよ」と、はにかんだ笑顔を見せた。

豊かさのありか

病気を機に一時外出から遠ざかっていたが、女学校時代の親友が誘ってくれたことでまた外に出られるようになった。コンサートだけでなく歌舞伎も観に行く。京都四条南座にも車椅子専用シートがあり、休憩ごとにスタッフがお手洗いの声かけをしてくれる。

娘様に話を伺うと、「昔から家でもじっとしていない人で、好きなことをしている時が一番生き生きしている」と、嬉しそうな声。

生活に介護が必要になっても、文化的な生活を送り、好きな服を纏い、口紅を差す彼女はとても魅力的だ。

そんな吉田様だが、入退院をくり返し、お休みが続くこともある。思うように体が動かず体力が落ちるその度に、京都大原記念病院でリハビリに取り組み、自宅に戻ってからは博寿苑でリハビリに取り組み、悪化することをご自身で防いでいる。
リハビリは下肢筋力を鍛えるペダリングと平行棒での立位保持、ステップ練習。生活動作を安定させ、外出できる筋力・体力の維持を目標にしている。今後、自家用車に乗れるよう移乗動作の安定も課題だ。

「文学や音楽に触れると、心が豊かになる」と話した吉田様。多感な10代、女学校の友人を何人も空襲で亡くした。暗い戦争の時代に失われた青春を、取り戻そうとしているようにも見える。
車椅子でも、介助が必要になっても、本当に芸術を愛する人には門戸が開かれている。あと必要なのは、吉田様のように思い切って飛び込んでいく勇気なのかもしれない。